こんにちは、Nはしです。
元漫画アシスタントでして、創作関連の発信をしています。
昔、某少年漫画雑誌の、漫画を描きたい人向けの質問コーナーのようなものに、こんな質問がありました。
「目など、黒く塗り潰す所は、筆で塗った方がいいのでしょうか?ペンで塗り潰した方がいいのでしょうか。」
編集さんの返答は、
「どちらでもいい。○○先生はつけペンでそのまま塗り潰している。」
というようなものでした。
実はこの質問は漫画を描く現場からすると、かなりトンチンカンなものなのです。
なぜトンチンカンな質問かと言うと、漫画原稿を日常的に作っている現場からすると
「それ聞く意味ある?」
という感じなのです。
黒いところは黒ければ、どんな手段を使っても良いのです。
マッキーでもいいし、墨汁でもいい。
インクでももちろんいい。
タバコの吸い殻を使ったりする、という作家さんのインタビューも見た事あります。(珍しいと思いますが)
プロの原稿はすごいけど、結局紙とインクでつくってる
でも、質問者さんの気持ちはものすごく!分かります。
プロの原稿は、基本的に実際に目にする機会などありません。
この質問は、
雑誌に印刷される原稿がどんなものか見たことがない。
何が必要で、何をやってはいけないのか分からない。
という状態だから出てくるものです。
大好きな漫画雑誌をつくる、憧れの先生の原稿。
自分も漫画家になりたい、それに近い原稿をつくらなければ!!
うおおおお!!
と、ちょっと目の前が見えなくなっているのだと思います。
(Nはしがそうでした。)
漫画の原画展は、大抵原稿をつくる参考にならない。
「プロの原稿をみる機会なら、原画展がある!」
と思うかもしれません。
でも、残念ながら大抵の場合は、あまり参考になりません。
なぜなら、原画展などがあっても、複製原画(本当の原稿をカラー印刷したもの)の場合がほとんどだからです。
複製原画は、つるんと綺麗です。
青で書かれた指示や下書きは見えても、修正などは見えなくなっています。
複製原画の原画展では、きっと普段は流れとして見るものを、一枚の絵として楽しんでもらいたい、という配慮で展示されているのでしょう。
これだと、出来上がりまでの工程が一切想像できませんので、ますます壁を感じることになるかもしれません。
漫画原稿の修正あとは、実はあまり綺麗なものではない
プロの原稿は、すごく絵として迫力がありますが、修正あとなどもあります。
修正なしに原稿を完成させる事は基本的に無いからです。
失敗してツギハギしたり、紙を重ねたりもあります。
ぶっちゃけ一枚の絵としてだけ見ると、
「え、これでいいの?!」と思うかもしれません。
それくらい修正あとというのは、絵として見る時は無い方がいいものです。
原稿の目的は印刷する事です。
印刷した時、見えなければ問題ありません。
Nはしが手塚治虫さんの展示を見た時、複製原画ではない、本当の原稿が展示されていました。
古いものなので、ツギハギの部分を押さえるテープは黄色く変色し、ブラックジャックの顔はホワイトで一度消され、全面的に描き直されたのがはっきり分かるものでした。
修正部分がはっきり見えている生の原稿、作家の生の絵の迫力が感じられて、Nはしはちょっと感動しました。
ツルンと綺麗な複製原画ではこの感覚は無かったと思います。
漫画原稿に特別な秘密はない。
だいぶ話はそれましたが、原稿をつくる際のインクは何でもいいのです。
気をつけるのは薄くならない事だけ。
ペン入れしたあと、消しゴムをかけると薄くなる事があるので、これだけ避けるようにすれば大丈夫です。
黒いところは黒ければよい。
プロの原稿の作成に特別な秘密はないのです。
だから、ますますすごいんですけどね。